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海への想い  地域の声

2020年1月28日

白保リゾートホテル訴訟 原告代表
新 里 昌 央

豊かな自然環境は、観光の“生みの親”

 これまで、多大なるご支援をしてくださいました皆様に御礼申し上げます。また、裁判の支援以外でも多くの皆様にご理解とご協力をいただき、重ねて厚く御礼申し上げます。

 振り返ると、2016年に白保村にリゾートホテル計画があることを知り、事業者の誠意のみえない意見交換会や説明会にはじまったこの計画は、私にとって、村の未来を大きく左右しかねない不安の種となりました。白保の海への悪影響の可能性が高い計画内容が次第に浮き彫りとなり、不安の種は脅威へと育ち、2017年、白保公民館臨時総会では、ほぼ全会一致で、このホテル計画への不同意を決議しました。
 
 私は、幼いころから見てきた漁師である父の背中に憧れ、漁師の道を選び、日々、海への感謝を忘れず、若輩ながら漁に励んでまいりました。八重山の経済発展を語る上で、観光は大きな柱となっているのも十分理解できますし、その産業を発展させるために、観光客の受け皿である宿泊施設の整備も課題であることは間違いありません。しかし、そもそも八重山の経済発展をずっと下支えしてきたのは、この自然環境そのものではないでしょうか。私は、豊かな自然環境は観光の“生みの親”だと思っています。良き環境には質の高い観光が望まれます。しかし、観光施設そのものが環境破壊につながっていくことは、“親不幸”そのものなのです。

 この白保村の海は、世界に誇るアオサンゴの群集をはじめ、120種を越えるサンゴや、そこに集まる魚など“豊かな海”の象徴といえる自慢の海です。母なる海は、サンゴ礁という素晴らしい水中景観をつくるにとどまらず、生活する住民にとって計り知れない多くの恵みを与え続けてきました。私もその恩恵を受けた者のひとりとして、このリゾートホテル計画にはどうしても納得がいかず、2018年9月、同じ想いの6名と共に訴訟に踏み切りました。この村で生まれ育った子ども達が、故郷を誇りに想い、自然や文化を愛し、また、その次の世代を担っていく大人へと成長していける環境を壊したくないのです。

 サンゴ礁環境に対する配慮に欠けているこのリゾート開発を止めることが、自分たちの生活と環境を守ることだと考え、提訴という形で闘ってきましたが、2020年1月、裁判の行方を左右する重大な事実が判明しました。この開発計画に対し、県は2018年3月に開発許可を出しているものの、事業者はその計画の排水に係る部分において、県保健所との協議が済んでおらず、計画変更も固まっていないことから、このままでは工事を着工することができないことがわかったのです。また、協議をしたとしても保健所が求める基準内での計画ではないため、事実上、このホテル計画を実施できないことになります。実施されない以上、私たち原告が差し止めを求めていた工事自体がないのですから、裁判として成立しなくなるわけです。結果として、この度の提訴の取り下げの申し出をすることになりました。

 裁判での司法の判断も重要ですが、それを待たずして、工事を進めることが現段階ではできないということに、ひとまずほっとし、これまで私たちを支援していただいた多くの皆様への感謝の気持ちが込み上げ、略儀ながら文面にて御礼を申し上げたいと思います。

 支援してくれる皆様がいなければ、リゾートホテル計画を止めるための運動を続けることや、計画の問題点を調べ上げることができなかったと思います。経済的な支援はもとより、皆様の気持ちが私たち原告の支えになってきました。
 
 石垣島の観光客数はインバウンドの後押しを背景に伸び、それに伴い島のリゾート化に歯止めが利かないこの現状において、被告である事業者は現行計画を修正し、新たな計画を打ち出してくるでしょう。私たち原告や地域住民には、安堵している時間はないのかもしれません。私たちの暮らしを脅かし、自然を破壊し続ける開発行為は、許すことはできません。その度に、辛い闘いを繰り返していくことになると思いますが、白保の海を守っていこうという信念は揺るぎません。

 しかし、想いだけでは闘い続けるに足りないものだと感じます。皆様に再びご支援のお願いをすることがあるかと思います。その際には、どうぞ、ご理解とご支援を賜りますよう宜しくお願いいたします。

 

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海への感謝 そして未来に…

2018年9月29日

白保リゾートホテル訴訟 原告代表
新 里 昌 央

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 石垣島や周辺離島にとって観光産業は基盤産業の柱の一つであり、多くの観光客が石垣島をはじめとする八重山に足を運んでくれることは喜ばしい限りです。ただ、大きなニーズに応えるために、豊かな自然が大規模開発によって破壊されているのが現状です。


 私が生まれ育った石垣島白保には素晴らしい海があります。世界に誇るアオサンゴの群集をはじめ様々な種類のサンゴや生き物たちが生息しています。“母なる海”は、人々に多くの恵みや癒しを与え続けてきました。しかし今、その貴重な海やその恩恵を感じてきた住民である私達は、大きな危機に直面しています。


 波打ち際からわずか100メートルほどの場所に大規模なリゾートホテル計画が持ち上がっています。沖縄県は法律上の問題がないとし、開発事業者に対し開発許可をだしてしまいました。この大型のホテル開発は周辺に公共用下水道がないことから、浄化槽処理後の排水を地下浸透させる計画です。その排水は基準を満たしていますが、サンゴが健全に生育するための水質と比べると、約100倍のチッ素を含む濃度であり、研究者や自然保護団体も指摘している通り、サンゴ礁環境に対する配慮に欠けています。それは、海域関係者が取り組んでいる保全活動に逆行する行為であり、サンゴや生き物に及ぼす影響は甚大で、白保の海が死んでしまうかもしれないという危機に直面していることを、まずは多くの皆さんに知っていただきたいと思っています。

 かつて白保村は、サンゴが広がる海を埋め立てる新石垣空港海上案の計画に対して、住民が賛成と反対に二分された苦く辛い過去をもつ集落です。当時、埋め立てに反対する住民に対して、調査の警備に動員された機動隊が一列となり、白い砂浜の海岸線を埋め尽くしました。それは、まだ幼少だった私にも異様な光景として映りました。そして、埋め立て案消滅とともに、住民の想いが激しく燃えた闘いも終わり、サンゴの海は守られました。

 今、改めてそこに、“白保の宝”を守りぬいた私の父や白保の住民をはじめ、志を一つに協力・賛同してくれた世界中の皆さんがいたことを忘れてはならないと感じています。

 父となった私が、今、子どもたちに残したい… 伝えたいものがあります。歴史を抱いた青く輝く白保の海です。変わりゆく時代の中で、いつもそこに変わらぬ癒しを与え、私達を見守ってくれる“宝”であるこの海を、次の世代のこども達、未来を担う彼らに残してあげたい。


 命を育んできた大切な海への感謝も忘れてはいけません。その感謝や海への恩返しが、今回の提訴なのかもしれません。サンゴや海の生き物たちは、その声をあげることができませんが、私たちは原告として、そして海を愛する者として、サンゴや海洋生物に悪影響が懸念される計画を止めるために訴えていきます。このリゾートホテルの工事を止めるために、ぜひ、皆様のお力をお貸しください。どうかよろしくお願いします。 

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